ホームページの担当が一人。
何を書き残せばいいのか。
ホームページを社内の一人だけが見ている場合、その人が辞める・休む・連絡がつかなくなる前に、どこに、誰の名前で、何があるかを1枚にまとめておくことが引き継ぎの土台になります。
- 形は、IPA(情報処理推進機構)が中小企業向けに配っている「資産管理台帳(サンプル)」の列が使えます。名称・管理者名・連絡先・保存先・登録日など
- 行は、ホームページの場合、ドメイン・サーバー・管理画面・メール・Googleの画面などの10の鍵です
- Googleの画面は、持ち主の決まりがヘルプに書いてあります。ビジネス プロフィールのメインのオーナーは1人だけで、譲るには別のオーナーか管理者がもう1人要る
ここでは、IPAとGoogleの原文と、台帳を作る順番を置きます。台帳にはパスワードそのものを書かず、どこに保管しているかを書く形にしています。
引き継ぎ台帳には、どんな列を作ればいいのか
IPA の「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版は、「個人事業主、小規模事業者を含む中小企業(以下「中小企業等」)の利用を想定しています」と書いている資料です。その付録6「資産管理台帳(サンプル)」は Excel で配られていて、「情報資産管理台帳」のシートには次の列があります(列名は原文のまま)。
| IPA の列 | ホームページの台帳で書くこと(当方の読み替え) |
|---|---|
| 業務分類/情報資産名称/備考 | 何の鍵か(例:ドメイン、サーバー)と、契約・登録している先 |
| 利用者範囲 | その画面に、いま入れる人 |
| 管理部署/管理者名/管理者連絡先 | 名義(誰の名前で契約・登録しているか)と、その人の連絡先 |
| 媒体・保存先 | ログインの情報を、どこに保管しているか |
| 評価値(機密性・完全性・可用性)/重要度 | 止まったとき・書き換えられたときに、どれだけ困るか |
| 保存期限/登録日 | 更新日(期限)と、この行を書いた日 |
※ 左の列は IPA の付録6(資産管理台帳 Ver.1.0)の「情報資産管理台帳」シートの見出しです。右の列は当方の読み替えで、IPA の資料には書かれていません。
同じ付録の「重要度定義」のシートでは、ホームページ掲載情報が、機密性では「漏えいしても事業にほとんど影響はない」の例に、完全性では「改ざんされると事業に大きな影響がある」の例に挙がっています。ホームページの台帳で大事なのは、隠すことよりも、書き換えられないこと・止まらないことの側だと、当方は読んでいます。
ホームページの鍵は、どれを書けばいいのか
ホームページの台帳の行を、当方の整理で10に分けると次のとおりです。
| 行 | 書いておくこと |
|---|---|
| 1. ドメイン(アドレス) | 取得した先・名義・更新日・支払い方法 |
| 2. サーバー | 契約先・名義・更新日・支払い方法 |
| 3. サイトの管理画面 | 入口のアドレス・入れる人・権限 |
| 4. メールアドレス | どこで設定しているか・どの機械で受けているか |
| 5. お問い合わせフォームの届け先 | フォームから届くアドレス |
| 6. Search Console | 確認済み所有者が誰か |
| 7. アクセス解析 | 管理者が誰か |
| 8. Googleビジネス プロフィール | メインのオーナーと、2人目 |
| 9. SNSのアカウント | 登録したメールアドレス・電話番号 |
| 10. 制作データと契約書 | 控えの置き場所・制作や保守の契約書・請求書 |
※ この10行は当方の整理で、IPA の資料の行ではありません。会社によって、予約の仕組みやネットショップなど、足す行があります。
4と5は、担当者の個人のアドレスになっていると、その人がいなくなったときにお問い合わせが届かなくなります。9は、登録した電話番号が担当者の個人の携帯になっていないかを、この機会に見ておきます。
名義の確かめ方は制作会社と連絡が取れないとき、乗り換える前に確かめる3つの名義に、管理画面に自分で入れるかの確かめ方はホームページを自分で更新できないときに書いています。
Googleの画面は、何人で持っておけばいいのか
Googleの画面は、持ち主の決まりがヘルプに書かれています(原文)。
ビジネス プロフィールには複数のオーナーを設定できますが、メインのオーナーとして設定できるのは 1 人のみです。
ヒント: メインのオーナー権限を譲渡するには、プロフィールに他に少なくとも 1 人のオーナーまたは管理者が必要です。
プロパティには 1 人以上の確認済み所有者が必要です。ユーザーは確認済み所有者のいないプロパティにはアクセスできません。
(中略・同じページの「確認済み所有者」の説明より)
確認済み所有者を追加または削除するには、サイトでトークンを追加または削除する必要があります。
ビジネス プロフィールは、メインのオーナーが一人だけで、ほかに誰も入っていない状態だと、ヘルプの書き方では、メインのオーナー権限を譲れません。台帳の8の行に「メインのオーナー」と「2人目(オーナーまたは管理者)」の両方の欄を作っておくと、空いていることに気づけます。
IPA のガイドラインも、「情報セキュリティ6か条」の「4.共有設定を見直そう!」の対策例に「従業員の異動や退職時には速やかに設定を変更(削除)する。」を挙げています。足すときと同じく、外すときにも台帳を見ることになります。
パスワードは、台帳に書いていいのか
IPA のガイドライン第4.0版は、パスワードの保管について、次のように書いています(原文)。
パスワードの漏えいを防止するために、紙、ファイル、パスワード管理アプリ等、各保管方法の違いを理解し、自社に適したパスワードの全般的な管理ルールを定め、従業員に周知しましょう。
どの保管方法にするかは、会社ごとに決めることとされています。この記事の台帳では、IPA の列の「媒体・保存先」にならって、パスワードの欄は作らず、「どこに保管しているか」だけを書く形にしています。台帳を印刷したり、人に見せたりしても、そこから入られないようにするためです。
同じガイドラインは、役職員の退職などのときに「情報や機器・ID・鍵等を回収し」、チェックリストや証跡で実行状況を見えるようにすることも勧めています。台帳の行は、そのままチェックリストとして使えます。
台帳は、どの順番で作ればいいのか
-
請求書と、届いているメールから行を拾う
使う資料:この1年の請求書・カードの明細・「更新のお知らせ」のメールドメイン・サーバー・有料の道具は、毎年か毎月お金が出ているので、明細から拾えます。
▸ 払っている先が分かった → その先を台帳の1行にします
▸ 払っている先が分からない → 制作会社や保守の会社の請求書の内訳を見ます -
1行ずつ、名義と入れる人を確かめる
使う画面:それぞれの管理画面の「ユーザー」「権限」「契約者情報」画面に入って、名義が会社か、個人か、制作会社かを見ます。
▸ 入れる人が2人以上いる → その名前を書きます
▸ 入れる人が担当者だけ → 2人目を足すかを、社長と決めます(Googleの画面は上のヘルプのとおり) -
更新日と、パスワードの保管先を書く
使う資料:契約の画面・更新のお知らせパスワードそのものは書かず、どこに保管しているかを書きます。
▸ 保管先を書けた → 書いた日を「登録日」の列に入れます
▸ 保管先が担当者の頭の中だけ → 会社で保管先を決めるところからです -
年に1回、台帳と画面を見比べる
使う資料:この台帳・各画面の「ユーザー」人が辞めたとき、入ったとき、契約先を変えたときにも見比べます。
▸ 台帳と画面が合っている → 登録日を書き換えます
▸ 台帳に無い人が入っている → その人が誰かを確かめてから、外すかを決めます
受け取った「制作データ一式」で、本当に移せるのか
台帳の「何があるか」の行を書いたら、手元にある制作データの中身も一度見ておきます。何が入っていれば足りるかは、サイトの作りで変わります。WordPressで作ったサイトについて、WordPressの公式の文書はこう書いています。
"If you are moving WordPress from one server to another, begin by backing up your WordPress directory, images, plugins, and other files on your site as well as the database."
サーバーを移すときは、WordPressのフォルダ・画像・プラグインなどのファイルと、データベースの両方を控えるところから始める、という書き方です。管理画面の「ツール → エクスポート」で作る書き出しのファイルについては、別のページに次のように書かれています。
"will contain your posts, pages, custom post types, comments, custom fields, categories, tags, custom taxonomies, and users."
書き出しのファイルに入ると挙がっているのは、投稿・固定ページ・コメント・カテゴリー・タグ・ユーザーなどです。この一覧に、画像のファイルやテーマ・プラグインは挙がっていません。
-
受け取ったものを、全部並べる
使うもの:制作会社から受け取ったファイル・メール・契約書ファイルの名前と、受け取った日を書き出します。まだ受け取っていなければ、契約書や規約に「何を・いつ渡すか」がどう書いてあるかを見ます。
▸ 受け取っている → 次の確かめへ
▸ 受け取っていない・書き方が分からない → 契約書のどこを見るかは契約の前に確認する5つに書いています -
サイトの作りが、WordPressかどうかを確かめる
使うもの:制作会社の見積書・契約書・請求書「WordPress」の文字があるかを見ます。分からなければ、制作会社に文字で聞きます。
▸ WordPress → 次の確かめへ
▸ WordPress でない(HTMLのページだけ)→ ページの数だけ HTML のファイルがあり、画像とデザインのファイル(CSS)が入っているかを見ます -
WordPress なら、ファイルとデータベースの両方があるか
使うもの:受け取ったファイルの一覧上の公式の文書のとおり、ファイルの側(画像・テーマ・プラグインなど)と、データベースの側の両方があるかを見ます。
▸ 両方ある → 公式の文書が「移すとき」に控えるとしているものが、そろっている形です
▸ 書き出しのファイル(.xml)だけ → 上の一覧に画像のファイルやプラグインは挙がっていません。足りないものがないかを、制作会社に文字で聞きます
そろっているように見えても、本当に動くかは、移す先の会社に見てもらうまで分かりません。ここで確かめるのは、受け取ったものの中身を、自分で一覧にしておくところまでです。
作り直す・制作会社を替えるとき、会社のメールは止まらないのか
会社のメール(info@自社のドメイン など)を、ホームページと同じサーバーで受けている会社があります。メールがどこに届くかは、ドメインの「MX レコード」という設定で決まります。JPRS の用語辞典は、MX リソースレコードをこう説明しています。
「mail exchange(メールサーバー、メールを配送するホスト)を指定するためのリソースレコードです。」
当方のドメインを2026年10月10日に調べると、MX は当方のドメインそのもの(優先度 0)を指していました。エックスサーバーのマニュアルが「ドメイン設定追加時のDNSレコード初期値」として挙げている「example.com MX example.com 3600 0」と同じ形で、ホームページと同じサーバーでメールも受ける形です。この形だと、サーバーを移すときに、メールの受け口も一緒に考えることになります。
エックスサーバーのよくある質問:「ネームサーバーは変更後、数時間~最大24時間程度で徐々に反映します。」「ネームサーバーの変更中は、移転元・移転先のどちらのサーバーに繋がるか予測できない期間が発生します。」
Google Workspace のヘルプ:「Google の MX レコードが反映されるまでに、最長で 48 時間ほどかかることがあります。新しいレコードが有効になるまでは、メールは以前のメール プロバイダに転送されます。」
同じ Google のヘルプでも、別のページ(「Google Workspace の MX レコードを設定する」)には「新しい MX レコードが認識されるまでに、最長で 72 時間ほどかかることがあります。」と書かれています。どちらにしても、切り替えた瞬間に全部が移るわけではない、という書き方です。だから、作業の手順より先に、頼む側が制作会社に聞いておくことが3つあります。
-
いま会社のメールを、どこで受けているか
聞く相手:いまの制作会社・サーバーの契約者ホームページと同じサーバーか、別のメールのサービスかを、文字で答えてもらいます。
▸ 同じサーバー → サーバーを移すときに、メールの受け口も一緒に決めます。次の2つを先に聞きます
▸ 別のメールのサービス → そのサービスを指している MX が、切り替えのあとも同じ値で残るかを、作業する会社に確かめてもらいます -
切り替えは、いつ・誰がするか
聞く相手:作業をする会社日時が分かれば、取引先に先に知らせておけます。Google のヘルプは「メールの量が少ない時間帯(夜間や週末など)に MX レコードの変更を計画します。」と書いています。
▸ 日時と作業する人が決まっている → 台帳に書いておきます
▸ 決まっていない → 決まるまで、古いサーバーを止めない約束だけ先にしておきます -
古いサーバーの解約日は、誰が決めるか
聞く相手:サーバーの契約者(自社か、制作会社か)上の「どちらのサーバーに繋がるか予測できない期間」のあいだは、メールも古いサーバーに届くことがある、と読めます。エックスサーバーのよくある質問は、ネームサーバーを変えたあと「丸1日程度様子を見たうえで、Webサイトの表示やメールの送受信をご確認ください。」と書いています。
▸ 自社が契約者 → 新しい側でメールの送受信を確かめてから、解約の日を自社で決めます
▸ 制作会社が契約者 → 解約の日を、文字で決めてもらいます
手順の詳しいところは、使っているサーバー会社やメールのサービスのマニュアルに書かれています。この記事で書くのは、聞いておく3つと、台帳の1行までです。台帳(Step 01)の「ドメイン」「サーバー」の行に、メールをどこで受けているかを1行足しておくと、作り直すときに聞かれても答えられます。
IZANAで作った場合、何がお手元に残るのか
当方の公開してからの「育てる」のページには、「納品時にお渡しするもの(制作費に込み)」として、次の項目を書いています。
- Search Console の登録と、見方の説明
- ブログ(お知らせ)の更新のやり方のご案内
- 制作データ一式(代金完済後。契約終了や他社への移行のときも、改めてお渡しします)
ドメインについて、料金ページには「ご自身の名義で取得したい方は、そうしていただいても構いません(当方で取得した場合も、ご解約時の移管に協力します)」と書いています。サイトのデータと利用権は、利用規約の第6条で「代金完済後にお客様に帰属」としています。渡すものと時期は、同じ規約の第4条に「代金完済後、制作データ(HTML・CSS・画像、WordPress利用時は引き継ぎ用データ)をお渡し」、第9条に「契約終了や他社への移行時は制作データをお渡しし、必要に応じてドメイン移管手続きに協力します」と書いています。
上の台帳は、当方で作ったサイトかどうかに関係なく使えます。台帳を作るのに、当方へのご依頼は要りません。
よくある質問
IPAの資産管理台帳は、どこで手に入りますか?
IPA の「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」のページで、付録6「資産管理台帳(サンプル)」として Excel が配られています。付録6の説明シートでは、記入例・重要度定義・情報資産管理台帳などのシートの使い方が書かれています。
Googleビジネス プロフィールのオーナーを、辞める担当者から社長に移せますか?
Google ビジネス プロフィールのヘルプは、メインのオーナーとして設定できるのは1人のみで、メインのオーナー権限を譲渡するには、プロフィールに他に少なくとも1人のオーナーまたは管理者が必要だと書いています。先にもう1人を足しておくことになります。
Search Consoleに、担当者しか入れません。
Search Console のヘルプは、プロパティには1人以上の確認済み所有者が必要で、確認済み所有者のいないプロパティにはアクセスできないと書いています。所有者の追加や削除のやり方も、同じヘルプに書かれています。
台帳にパスワードを書いておけば、早いのではないですか?
IPA のガイドラインは、紙・ファイル・パスワード管理アプリなど各保管方法の違いを理解し、自社に適した管理ルールを定めるよう書いています。この記事の台帳では、パスワードそのものは書かず、どこに保管しているかを書く形にしています。
出どころ(2026年10月10日に原文を確認)
- IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」(第4.0版 本編・付録6「資産管理台帳(サンプル)」)
- Google ビジネス プロフィール ヘルプ「ビジネス プロフィールのオーナーと管理者を管理する」
- Search Console ヘルプ「所有者、ユーザー、権限の管理」
- 当方の「育てる」のページ(納品時にお渡しするもの)・料金ページ(ドメインの名義)・利用規約(第4条・第6条・第9条)
- WordPress「Migrating WordPress」(Moving to a New Server)・WordPress「Tools Export screen」(2026年10月9日に確認)
- JPRS 用語辞典「MXリソースレコード(MXレコード)」・エックスサーバー マニュアル「DNSレコードの編集」・エックスサーバー よくある質問「サーバー移転の際に、ネームサーバーを変更すると、どれくらいで反映しますか?」・Google Workspace ヘルプ「MX レコードを変更する際の問題を回避する」・Google Workspace ヘルプ「Google Workspace の MX レコードを設定する」(2026年10月11日に確認)・当方のドメインの MX(2026年10月10日に調べたもの)
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